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Treasure AI Night 開催レポート — AIネイティブプロダクトの裏側:ResearchからEnterprise Productへ

高橋 達
By 高橋 達June 2, 2026
注記

本記事は、日本で開催されたオフラインイベントの開催レポートです。各セッションは日本語で行われました。イベントページ:Treasure AI Night(connpass)

2026年6月2日、Treasure AIは技術者向けイベント「Treasure AI Night — AIネイティブプロダクトの裏側」を開催しました。

2026年4月、私たちはTreasure DataからTreasure AIへとリブランディングしました。社名変更は単なるブランド刷新ではありません。AIを機能のひとつとして提供するのではなく、AIを前提として企業やプロダクトそのものを再設計するという、新たな方向性を示すものです。

今回のTreasure AI Nightでは、「AIネイティブな企業はどのように製品を作るのか」をテーマに、社内で実際に利用しているAI開発基盤や、新たに開発したエンタープライズ向けAIプラットフォームのアーキテクチャを紹介しました。

会場となったファインディ株式会社様のオフィスには、多くのエンジニアやプロダクト開発者の皆さまにご参加いただき、AIエージェント、AIネイティブな開発プロセス、エンタープライズ向けAI基盤について活発な議論が行われました。


Treasure AIへのリブランディング

AI時代における企業の再定義

オープニングでは、Product Managerの高橋より、Treasure AIへのリブランディングと今後のプロダクト戦略について紹介しました。

トレジャーデータは2011年に米国で創業し、ビッグデータプラットフォームからカスタマーデータプラットフォーム(CDP)へと進化してきました。しかし生成AIの普及によって、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。

AIモデルそのものは急速にコモディティ化しつつあり、今後の競争優位性は「どのモデルを使うか」ではなく、「どのようなデータ・業務プロセス・権限管理をAIと接続できるか」に移りつつあります。

Treasure AIでは、この変化を見据え、「Agentic Experience Platform」という新たな構想を掲げています。

企業データを理解し、状況を判断し、自律的に行動するAIエージェントを実現するため、

  • Perception(知覚)
  • Memory(記憶)
  • Intelligence(知能)
  • Action(実行)

という4つのレイヤーを統合したプラットフォームの構築を進めています。

その実現に向けて、

  • Treasure Work
  • Treasure AI Studio
  • Engage Studio
  • Treasure AI Voice
  • Composable Audience Studio

といった製品群を展開しています。


Treasure Work

全社員がAIエージェントを使える環境を作る

続いて、Senior Principal Software Engineerの齋藤より、社内AI活用基盤「Treasure Work」の開発背景について紹介しました。

AI活用の取り組みというと、まず最新のモデルやエージェントに注目が集まりがちです。しかし私たちが直面した課題は別の場所にありました。2024年にClaude Codeを全社導入したものの、半年後の利用率は約30%程度に留まっていました。

理由は単純でした。ターミナル操作やGit、Unixコマンドといった開発者向けのインターフェースが、多くの社員にとって高いハードルになっていたのです。

そこで開発したのがTreasure Workです。

Treasure WorkはClaude Codeをベースにしたデスクトップアプリケーションであり、AIエージェントを利用するために必要な環境をあらかじめパッケージ化しています。ユーザーは複雑なセットアップを行うことなく、インストールするだけでAIエージェントを利用できます。

現在では社員の80%以上が利用する社内標準ツールとなり、

  • ソフトウェア開発
  • ドキュメント作成
  • リサーチ
  • データ分析
  • プロダクト企画

など幅広い業務で活用されています。

Three Layer Harnessという考え方

Treasure Workの開発を通じて私たちがたどり着いたのが、「Three Layer Harness」という設計思想です。

AIエージェントの能力はモデル性能だけで決まるわけではありません。どのようなツールを利用できるのか。どのような知識を与えるのか。どのようなUIで利用するのか。これらすべてが重要です。

そこで私たちはAI基盤を以下の3層に分離しました。

  • Tool Layer — CLI、MCP、ファイルシステム、各種APIなど、エージェントが行動するための実行基盤。
  • Knowledge Layer — スキル、ガイドライン、システムプロンプト、ベストプラクティスなど、エージェントが判断するための知識。
  • UI Layer — CLI、デスクトップアプリ、Webアプリなど、利用者がエージェントと対話するためのインターフェース。

この構造により、モデルやエージェントが変わっても資産を再利用できるようになり、研究成果を迅速にプロダクトへ反映できるようになりました。

また、

  • tdx(CLIベースの研究環境)
  • Treasure Work(GUIベースの実験環境)
  • 顧客向けプロダクト

という段階的な構造を採用することで、新しい技術を安全かつ高速に検証しながら製品へ取り込むサイクルを実現しています。

資料をダウンロード(PDF)


Treasure AI Studio

エンタープライズAIを支える実行基盤

共同創業者でありChief Architectの古橋貞之からは、新製品「Treasure AI Studio」のアーキテクチャについて紹介しました。

Treasure AI Studioは、企業向けに設計されたAIネイティブプラットフォームです。今回のセッションでは、企画からリリースまでの開発プロセスと、その裏側にある技術基盤について共有しました。

特に象徴的だったのは開発スピードです。最初のプランファイルが作成されたのは2026年2月末。その後、約10日で動作するプロトタイプが完成し、Web・モバイル・デスクトップ対応を経て、約3か月で本番リリースに到達しました。

このスピードを支えたのが、Claude Codeを中心としたAIネイティブな開発スタイルです。設計書作成、アーキテクチャレビュー、実装、Pull Request作成までをAIと協調しながら進めることで、従来の開発プロセスで発生していた待ち時間やコミュニケーションコストを大幅に削減しています。

AIエージェントを安全に動かす「AI OS」

一方で、AIエージェントに高度な権限を与えるほど、セキュリティやガバナンスの課題も大きくなります。

AIエージェントは、

  • ファイルシステム
  • ネットワーク
  • コード実行環境
  • 外部API

へアクセスしながら動作します。個人利用であれば便利な仕組みも、企業利用では慎重な制御が必要です。

Treasure AI Studioでは、この課題を解決するために独自の「AI OS(AiOS)」を開発しています。Bottlerocket OS、MicroVM、Linux Namespace、Seccomp、OverlayFS、SSLインスペクションなどの技術を組み合わせることで、多層的なセキュリティを実現しています。

また、

  • サンドボックス環境の事前起動
  • 実行環境プールによる低レイテンシ化
  • エージェント障害時の自動復旧
  • 監査ログ収集

など、実運用を前提とした仕組みも組み込まれています。

単なるチャットツールではなく、企業が安心して利用できるAI実行基盤として設計されている点が、Treasure AI Studioの大きな特徴です。

資料をダウンロード(PDF)


AIネイティブ企業として目指すもの

今回のTreasure AI Nightで私たちが伝えたかったのは、「AIを導入すること」そのものではありません。

重要なのは、AIを前提として企業や製品、開発プロセスそのものを再設計することです。

Treasure Workで得られた知見は製品へ還元されます。製品開発で得られた学びは、再び研究開発へフィードバックされます。研究、社内活用、顧客向けプロダクトが分断されることなく循環し続けることこそが、AIネイティブ企業としての競争力になると私たちは考えています。

Treasure AIはこれからも、AIエージェント、AIネイティブな開発プロセス、エンタープライズAIの実践知を積極的に発信していきます。

おわりに

ご参加いただいた皆さま、そして会場をご提供いただいたファインディ株式会社様、ありがとうございました。

今後もTreasure AIでは、技術コミュニティの皆さまとともに学び、議論し、実践知を共有する場を継続的に開催していきます。次回のTreasure AI Nightでお会いできることを楽しみにしています。